八束澄子さん作。
この人の文書が好きです。
たとえば、
「サンキュ」
かえってきた口ぶりに、いたわりを感じた。
や
深々とした目で美雨を見つめた。
のような表現。
舞台は京都です。
美雨は、母と二人岡山で暮らしていましたが、母が再婚することになり、京都に引っ越して来ました。
新しい父には、大也という息子がいます。美雨より二つ上。
新しい家に居場所がない美雨は、街を歩き回ります。
その時見つけた骨董屋で、店先に飾ってあった茶碗に魅せられます。
そこで欠けた茶碗を修復する金継ぎのことを知り、そのおかげで陸や樹と知り合うことになります。
金継ぎの師匠が、
「欧米では修復というと、ひたすら傷をかくすことに専念するんだけどね、日本ではその逆で、ありのままを受け入れ、傷ついたその姿に美を見出して、修復でより美しくすることに心血を注いだんだよ。」
という場面には、はっとさせられました。
美雨は、欠けた家族でも修復できることに気づき、前向きになっていきます。