八束澄子さん作。
部活のバレーボールに、ようやく情熱が湧いてきた主人公の美月。
朝練に出かけるとき、ふと思う。
〈今まで考えたこともなかったけど、そういえば、団地の窓のひとつひとつに、いろいろな人の、いろいろな暮らしがある。〉
美月の住む部屋の下には、柴田のじいちゃんが住んでいる。
かつては自治会長もした人だが、数年前に奥さんが亡くなってから偏屈な人になってしまった。
一人暮らしのはずのその柴田のじいちゃんの部屋の窓から、女の子がのぞいていた。
その子は、児童養護施設からお母さんに連れ出されてきた陽菜ちゃんだった。
物語の区切りごとに、陽菜ちゃんの視点で語られ、物語の謎がだんだん解けて行く。
陽菜ちゃんとママを密かに引き取っていた柴田のじいちゃんはスーパーへ出かけたまま帰って来ず、食べ物がなくなった親子はだんだん衰弱していく。
情熱を燃やしたバレーボール部を引退し、受験に向けて悩む自分の部屋のすぐ下で、学校にも行けず閉じこもっている陽菜ちゃんのことを知り、衝撃を受ける美月。
スーパーへ出かけた柴田のじいちゃんは、そこで倒れて意識不明のまま入院していた。
事態は急展開する。