いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

13枚のピンぼけ写真

すごい物語でした。

読み終わったときに、ゾクっとしました。

キアラ・カルミナーティ作、関口英子訳。

1914年から1918年の世界史の中に、放り込まれたような気持ちになる一冊でした。

イタリア文学の最高峰ストレーガ賞児童書部門受賞作です。

 

イタリアとオーストリアの戦争に巻き込まれた北イタリアのある家族の物語です。

主人公はイオランダ。お兄さんやお父さんが、相次いで祖国イタリアのために出征していく中、お母さんと妹のマファルダと共になんとか暮らしていました。

しかし、戦争の暗い影が、どんどん家族を追い詰めていきます。

言いよる将校に冷たい態度を取ったお母さんが、オーストリアのスパイの嫌疑をかけられて逮捕されてしまいます。

この時のイタリアでは、軍の火薬庫が爆発して市民が犠牲になっても、新聞は報道しませんでした。

また、ある司祭が、平和こそが神の一番の願いだと言ったために、戦争に反対したとして捕らえられたりしました。

どこの国でも、戦争となると、同じことが起こるのですね。

守ってくれる人をなくしたイオランダが危険な旅をして出会ったのが、アデーレおばさん。

マファルダとロバのモデスティーネとともに、アデーレおばさんを訪ねると、実はおばあちゃんがいることが分かります。

お母さんは、2人におばあちゃんのことを話したことがありませんでした。

結婚に反対したおばあちゃんに、二度と帰ってくるなと告げられていたからです。

爆撃に晒されたり、通行許可証がないので危ない目にあったりしながら、おばあちゃんを探しにいきます。

果たして、おばあちゃんは、受け入れてくれるのか。

小さなマファルダが、時々発するハッとする一言が、物語を明るくしてくれます。

ロバのモデスティーネが、生き別れたりせず、最後にマファルダのところに戻ってきてくれたのも、うれしいこと。

それに何より、訳のうまさに何度も読み返してしまう、次のような一節があるのが、この本のいいところでした。

 

そうしてサンドロも行ってしまい、夏の残りの日々は、流れにのまれたカエルの卵みたいにすべり去っていった。

 


願いごとも心配ごともふいに消え失せ、記憶や希望の結び目がほどけて、重りのない飛行船のようにふわふわと浮きあがるような気がした。

 


アデーレおばさんは、もう一度、胸の奥まで息を吸いこんだ。まるで海の香りのなかに、生涯でいちばん美しかった歳月がしまわれているかのように。

 


アデーレおばさんの畑と、サンドロが寝泊まりしていた物置小屋を見るなり、また、悲しみのペンチで喉もとをぎゅっと締めつけられた。

 

戦闘のシーンは描かれていませんが、男手がなくなった村や町で、女の人や子どもたちがどんな苦労を味わったのかが痛いほど伝わってきます。

世界の国の、偉い人にも読んでもらいたい本です。

 

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