ヨーケ・ファン・レーウェン & マリカ・ブライン作。
ヨーケさんは、オランダの作家。
マリカさんは、モロッコ生まれで、この物語の主人公ジマのモデル。
国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルの活動を通してヨーケさんは、カサブランカで刑務所に入れられていた青年と知り合います。
その青年が、物語の中のアムラ兄さんです。
ジマたち家族は、貧しいながらも、楽しく暮らしていました。
ところが一番上のアムラ兄さんが、ビラを配ったことで警察に捕まります。そして、なんの罪もないのに政治犯として8年半も投獄されてしまうのです。
その間の家族の絶望や懸命に生きる姿を描いています。
ただ、ジマの目を通して描かれるところが、この物語のすごいところです。
重苦しい話なのに、読み飽きません。
モロッコの政情や秘密警察のこと、民衆のために活動している兄さんたちのことを子どもなりにうっすら感じながら、家族のつながりを何よりも大事にしているジルがステキです。
次の箇所を描き抜きました。
それからメディは、5人の母親たちが、そのひとりはうちの母さんなんだけど、逮捕され、二日間拘置所に入れられたと話した。
ホールじゅうの人たちが立ちあがって励ましの拍手をしてくれ、わたしはその音を体にしみこませた。この拍手を母さんに、ほとんど学ぶ機会がなかったのに、とてもたくさんのことを知っている母さんに、伝えたかった。わたしが感じていたのは、不幸があったからこそ、はじめて知ることができたよろこびだった。