ミンフォン・ホー作。
もりうちすみこ訳。
主人公は、ダラ。お父さんは村で子どもたちに文字を教えていたので、クメール・ルージュに連れていかれ、翌朝ジャングルで遺体で見つかった。
でも、嘆いたり騒いだりできない窮屈な村の暮らし。クメール・ルージュはベトナム兵に何も奪われないように、家も食料も種もみも全て焼き払ってしまった。
ダラは、兄さん母さんとともに故郷の村を離れノンチャン難民キャンプに向かう。
そこで知り合ったのがニア。
ケムじいさんといとこの女の子と赤ちゃんといっしょに難民キャンプにいた。
何かと親切にしてくれて、ふた家族は行動をともにするようになる。
ダラは歳の近いいとこの女の子ジャントゥと仲良くなる。
その後出くわすさまざまな窮地を、ダラはジャントゥのおかげで乗り切ることができる。
ジャントゥがダラを励ます言葉は重い。言い返す言葉が見つからない。
「何もかもうまくいく?ダラ、目を開きなよ。何もかもうまくなんか、いかないって。」
「戦いは全然、終わりそうにない。いったい何なんだよ?鍬やら鋤やらより、うんとたくさんの銃が配られてるし、種もみより、よっぽどいっぱい地雷をまいてるじゃないか。そのくせ、カンボジアの未来だの、国を再建するだの、そんなの、おかしいよ!」
兵士になろうとする兄さんが、
「ダラ、お前はまだ子どもだ。戦争がどんなものか、わかってないんだ」
と言ったときの、ダラの返事は心に突き刺さる。
「わたしにだって、わかるわよ。ジャントゥがこのハンモックから二度と起き上がれないってことぐらい。父さんだって、もう二度と帰ってこない。戦ってもいない人間を殺すのが戦争だってことくらい、とっくにわかってるわよ!」
ウクライナに武器を供与することが、本当にいいことなのか、誰も教えてくれない。