いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

キララの海へ

この巻は、サンゴロウの視点で語られます。


こんな文があるのが、うれしい。


ときどき、おれは、船のへさきにたって、海の声に耳をすました。
海の声っていうのは、そう、なんて説明したらいいかな。波の音、風の音、それだけじゃない、もっとふかいもの。海のふかいふかい底から、おれたちにむかって、よびかけてくるものだ。
それは、物語だったり、歌だったり、なにかのことばのくりかえしだったりする。長く、はっきりしていることもあるし、とぎれたり、ごちゃごちゃになったり、とちゅうでふいと消えてしまったりすることもある。
きくたびに、海の声はちがう。やさしいときもあるし、おこっているときもある。もちろん、おれにも、意味はぜんぶはわからない。というより、まあ、ほとんどわからないな。でも、おれは、それをきくのがすきなんだ。