ミカンちゃんのことが頭の中をぐるぐる回って、はじめは内容がなかなか入ってこなかったのですが、大腸カメラをするための個室に入って時間をかけて1800mlの薬を飲む間に、読めてしまいました。
九州旅客鉄道の情報誌に載ったエッセイです。
どれも面白かったのですが、特に印象に残ったのは、「動物たち」と「斜めのコップ」。
前者は、ブエノスアイレスののら犬たちの話。のら犬たちは、リードのついた飼い犬とすれ違う時、みんな遠慮深く道の端に避ける。飼い犬に吠え立てられれば、それがどんなに小さな(おまけに、生意気な)犬で、自分がどんなに大きな犬でも身を小さくして引き下がる。万が一にも、飼い犬にケガでもさせたら、どんな目に合うかわかっているのだ。
江國さんは、それは切ない光景だったと言いつつ、私は野良犬たちをほめたたえたかった。みんな立派で気高いと言いたかった、と書いている。
後者は、クラッシャーエクスプレスという文字のついたワイングラス。もうずいぶん前に他界したお父さんの旅先の土産だ。スイスの登山列車に乗った時、食堂車で使われていたコップだそうで、線路の傾斜と同じ角度で斜めになっているのだ。車掌さんに頼んで1つ分けてもらったという。面白がりだった。お父さんが忍ばれる。