藤原審爾さん作。
すごい人がネコの物語を書いてくれていたものです。
この人も猫好きだったのですね。
作中の物書きの南川さんが、作者の分身のような気がしました。
多摩川の河原に捨てられていた黒チビ。
もう鳴く力もなくなりかけていたのが、順子に拾われます。
マンションは犬ネコ禁止でしたが、母親映子は我が子が捨てネコを思う気持ちに目覚めたことに驚き、なんとか飼ってやることにする。
ビュートと名づけ、マンション下の花壇に降りれるようにして、土にも親しませる。
やがて苦情がきて、実家の土地に猫と暮らせる家を建て、移り住む。
裏は武蔵野の面影を残す森で、ビュートは野良猫たちとも交わっていく。
やがて界隈のボスになり、縄張りの平和のために力を発揮する。
蛇と闘ったり、犬をけしかけて野良猫を襲わせる医者の息子と渡りあったり、食堂の奥さんに煮え湯をかけられた白猫の子を守ってやったりする。
猫に優しい人たちが多い地域だが、野良猫が生きる厳しさは今も昔も変わらない。
車に轢かれて死んでしまったビュートは、町の人たちにお葬式をしてもらい、お墓に埋められる。
母親暎子は、順子がビュートから見えないものをたくさんもらっていたことに気づく、というお話でした。
「冒険」って題名ですが、普通のネコの一生の物語です。
40数年前の本に、図書館で出会えてよかった。