望月泉さん作。
主人公いっちゃんは、作者のお母さん。
幼い頃から聞かされていた中国からの引き揚げ体験を、一冊の本にまとめた。
いっちゃんの家族は、設計技師をしていたお父さんについて、静岡から満州の鴨緑江近く、通化に渡る。
そこで、下の4人の弟や妹と共に暮らす。
お母さんは赤ちゃんを産んで体を悪くし、寝込んでしまう。
生まれた赤ちゃんは、名前もつけてもらえずに亡くなってしまった。
終戦を境に、町の様子がガラッと変わり、食べ物も無くなる。
こんりゃんととうもろこしのおかゆは、煮ても煮ても柔らかくならない。
ある日中国兵がやってきて、お父さんが連れて行かれてしまう。
氷の穴に突き落とされたり、防空壕に詰め込まれて銃撃されたりしたが、なんとか生き延びて帰ってきた。
ようやく引き揚げることになったが、家族バラバラで行くことになる。
いっちゃんは、下の弟キヨちゃんと2人で根本さんについて日本に向かう。
お母さんと別れる日の晩、お母さんの布団で、静岡で会おうねと泣きながら約束する。
そうして出発したが、ぎゅうぎゅうの無蓋貨車で、根本さんとはぐれてしまう。
たくさんの人が途中で力尽きて倒れていく中、10歳のいっちゃんは6歳のキヨちゃんを励ましながら、引き揚げ船の出る葫蘆島を目指す。
読むのが辛い話ですが、忘れてしまってはいけないことだと思いました。