いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

香君 下

読み終わりました。

下巻、遥かな道。

 

オアレ稲が出す香りの声が聞こえてしまうアイシャ。

それは、助けてという悲鳴。

害虫オオヨマに取りつかれ、オオヨマの天敵を呼ぶ声だ。

異郷のバッタは、イナゴの大群のようにやってきてオオヨマを食べ尽くすが、なんとオアレ稲まで食べてしまう。

被害を防ぐためには、せっかく実ったオアレ稲を焼くしかない。

バッタの進んでゆくどの地域のどれだけのオアレ稲を焼くのか。

手遅れにならないためには、西カンタル藩王国のオアレ稲は焼かねばならない。

しかしアイシャの考えは、ウマール帝国全体のオアレ稲を焼くことだった。

 

ふたりの香君の章がクライマックスだ。

どうなるのだろうとハラハラさせられる。

途中で倒れてしまうオリエに変わって、アイシャが後を引き継ぐ。

皇帝にまで新しい香君だと認めさせてしまうのはさすがだ。

その後、神のような存在でなく、人間らしい香君として生き生きと過ごしているのが、アイシャらしい。

 

ふとした描写に、ますます上橋さんの文章が好きになる。

例えば、

黄昏どきにふと訪れる、なにとも知れぬ哀しさ。決して埋めることの出来ぬ孤独。

 

上橋さんは、2019年にこの物語を書き始めたが、なかなか進まなかったらしい。

それは、高齢のお父さんが弱り、残りの日々をどう過ごさせるか、医療的な選択を迫られる日々が長く続いたからだそうだ。

まさに今のぼくと同じだ。

母は、昨日から食べることができなくなり、水分の点滴をしてもらうことになった。

雨だったので、バスで次女と行く。

次女の顔を見てうれしそうな表情をしてくれたのが、せめてものことだ。

 

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