新十津川物語 4巻。
この巻では、大正4年までが描かれている。
あやは代用教員となり、奥地の吉野へ行った。吉野は、フキたちより遅れて北海道に入植した奈良県吉野の人たちが入ったところだ。
地図で調べてみると、確かに今も新十津川町に吉野の地名が残っている。
航空写真では、整然と水田が並んでいた。
物語の時代に、原野を切り開いて畑となり、厳しいと一言では表せないほど厳しい冬を何度もこえて今の姿になったのだろう。
豊太郎は亡くなり、庄作は陸軍幼年学校を落ちて通信の学校へ行き郵便局で働き始めた。
開拓はフキ1人で担うことになるが、また恭之助が現れて力になってくれる。
時代に翻弄されながら、へこたれずに生きていくフキたちから深い力をもらえる。
物語は淡々と描かれているが、作者川村たかしさんの思いは、ひしひしと伝わってくる。
例えば、次のような一節から。
フキはほほえみながら見おくっていた。娘もだんだん大きくなっていくと思った。女の子らしい思いやりが、ただよってのこった。
〈文明開花〉だの〈辺境開発〉だのといいながら、人ごろしをほうっておくお上のやり方が腹にすえかねた。いや、きたないものでもあつかうような夫の考えも気にいらない。じぶんにとってはたったひとりの兄だった。彼女はめずらしく腹をたてていた。