海を渡るゴムボートには、カゴに入れた白ネコも乗っていた。
ここでも密航業者に大金を渡さなければならない。
新十津川物語で、光一たちが樺太から稚内へ戻ろうとした時もそうだった。
『列車はこの闇を抜けて』でも、グアテマラからアメリカを目指した少年たちは、お金を払ってマフィアの助けを借りないと密航は成功しなかった。
ネコを連れての避難は、どれだけ大変だっただろう。
子どもたちをボートに乗せるだけでも不安なのに、ネコを連れて海を渡らなければならないのは、想像するだけでも身が縮む。
せっかく辿り着いたギリシャの海岸で、混乱に紛れてネコのクンクーシュは逃げ出してしまう。
運が良かったのは、難民を手助けするボランティアの人に保護されたこと。そのひとも猫好きだった。
何人かの人に引き継がれて、クンクーシュはドイツで暮らすことになる。
そして、迷子の難民ネコを飼い主に返すプロジェクトを通して、ノルウェーに渡っていた飼い主と再会を果たすのです。
猫好きさんが世界中にいて、それぞれの気持ちがバトンタッチされていくのが嬉しい。