新十津川物語、第9巻。
失意のために荒んだ生活をしていた幸彦は、ブラジルへ渡りようやく家族のために真面目に働き出す。
京都から北海道へ嫁いできたしのぶも、ホッとしたことだろう。
フキの孫たちは、それぞれに困難を抱えながら、戦後の混乱の中を逞しく生きていく。
しかし、ようやく東京に働き口を見つけ、あいと共に根室からの急行まりもで函館に着いた花房晴男を、作者は青函連絡船洞爺丸に乗り込ませる。
おりしも中心気圧966ミリバールの台風が猛スピードで北海道に近づきつつあった。
そこからの描写はとても迫力があった。
なんとか二人が助かってほしいと願いながら読みすすんだ。
波に飲み込まれて気を失ってから、気がついたのはあいだけだった。
巻末の解説は、亀村五郎さんが書かれていた。
作文指導の大家だ。
新任の頃、この人の赤ペン標語の書き方の本を大切にしていたことを思い出した。