いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

天と地の守り人 【三】

賀茂川のベンチで読み終わりました。
長い長いバルサとチャグムの旅が終わりました。


ラチャの顔をみながら、バルサは、胸の底に、なんともいえぬにがいものがひろがっていくのを感じていた。
チャグムが、もがきながらかけぬけてきた道は、雲間からさしこむ光の道などではなかった。ーきたない思惑と、罠と、血のにおいに満ちた、泥の道だった。
吹雪のなかで、顔から血をながして自分をみていたチャグムの顔が・・・そして、雪の峰が夕日に染まるのを、魅いられたよいにみつめていたチャグムの顔が、目にうかぶ。
だれもが、できるはずがないと思うようなことを、チャグムはあきらめずにやりとげた。
それが、どれほどたいへんなことであったのかーチャグムがどんな旅をしたのかーラチャたちが知ることはない。これから、かたりつがれていくのは、きっと、いまラチャがかたっているような、心おどる、うつくしい神の子の語り伝えなのだろう。
それが、チャグムにとっていかにむごいことなのか、ラチャにつたえる言葉ももたない自分が、もどかしかった。