いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

家族

村井理子さん作。

読み終えました。

決して読んで楽しい話じゃない。

家族の思い出って、楽しいことよりも嫌なことの方が、より記憶に残っているものかもしれない。

お互いに傷つけあって、あの時ああすればよかった、あんなことしなければよかったと思い悩むことばかりだ。

あの時の時間はもう戻ってこないし、亡くなってしまった父母には今となってはもう謝ることもできない。

村井さん親子も、気持ちを理解し合えないまま、罵り合って傷つけあって、助け合うこともできず、家族がこわれていった。

嫌なことがあると酒に逃げてしまう父、家のことを何もしてくれず母親らしくない母、落ち着きなく問題ばかり起こして父親に嫌われる兄。

3人がそれぞれに亡くなってしまうまで、楽しかったことやいい思い出はほとんど出てこない。

 

なのに、最後の章でこう書かれている。

 

父が亡くなって三十一年、母が亡くなって七年、兄が亡くなって二年の月日が過ぎた。三人をそれぞれ見送った私は、とうとうひとりぼっちになった。家族がいるのだから、一人じゃないとよく言われるけれど、私のこの体がそもそもあった場所、さくら荘で身を寄せ合っていた私たち家族は、私を残して全員が帰らぬ人となっている。懐かしい彼らと会うことは、もう二度と叶わない。そんな意味で、私はすっかりひとりぼっちだ。懐かしいという気持ちと、理解してあげたかったという気持ち、時代がよければ、場所がよければ、もしかしたら今も三人は生きていて、年に一度くらいは四人で集まって、笑い合いながら近況報告ができていたのかもしれない。一度でいいから、そんな時間を過ごしてみたかった。父と兄が怒鳴り合わない時間を、母が心から笑う時間を、兄が他者との心の繋がりを感じられる時間を。

ほんの些細な誤解を早い段階で解いていれば、きっと私たちは幸せな家族になれたはずだ。全員がそれぞれ、愛情深い、優しすぎるほど優しい人たちだったから。

 

どこの家族もそうなのだろうけど、うちの家族もそうだったなあと強く思いました。

 

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