楢原真也さん著。
誠実な文章、謙虚な姿勢、子どもたちを思う愛情に心打たれます。
施設で暮らすことは「不幸」や「かわいそう」ではない、と著者は言います。
施設で暮らす子どもたちの存在を、自分に課せられた苦難を乗り越えようと一生懸命に生きている子どもたちがいることを、多くの人に知ってもらうためにこの本を書いたそうです。
この人はたいへんな読書家です。
こんな本も読んでおられるのかあ、と驚かされます。
例えば、
宮下奈都さん『羊と鋼の森』
プレイディみかこさん『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
などなど。
この人の施設には、ヒヤリハットならぬ「にやりほっと」というシステムがあるのだそうです。
日々の小さな奇跡を意識的に見つけ共有していこいうという取り組みです。
いいアイデアですね。
次のようなところを、抜書きしました。
敵意を向けこそすれ、多くの場合、悪意があるわけではない(はずだ)。
そう信じながら私は、「あなたにはそうしなければならない理由があったんだよねと」と、こころのなかで(あるいは直接に)彼らに時折問いかける。
彼らの人生やこころは彼らだけのものである。私たちの人生もまたそうであるように、すべてを分かち合うことができないからこそ、私たちは相手に近づきたいと願う。
そういう子どもたちに対する私たちの姿勢を、「共感」という営みの本質を、「想像力をめぐらせて、その人をひとりぼっちにしないこと」と以前に恩師がおっしゃったことがある。
さまざまな知見を学び、子どものそれまでの生育歴を知ろうと努め、それでも日々の生活の中では、わかりあえないと感じることばかりです。どう接したらいいのだろうと迷ってしまうこともあるでしょう。そうしたときに、私たちにせめてできることは、同じ場所で過ごし、一緒の時間を積み重ねることです。