森埜こみちさん作。
い〜い物語でした。
最近読んだ中で一番よかったかも。
この人の言葉の巧みさには、しばし空を見上げてしまいます。
暗く沈んだ様子は、だからなのか。
でもね、あのとき、たがいにたがいの不安を感じあっていたような気がするのよ。彼女たちのなかには大きな不安があり、わたしたちのなかにもけっして小さくはない不安があった。おたがい、自分たちの不安のなかにすわっていた。
片側から差し込んでくる夕陽が晩秋の大通りや建物を黄金色に染めて、その黄金色の光のなかを、仕事帰りのひとや若者たちが帰るべき場所に帰る、向かうべき場所に向かうというように足早に歩いていた。
なんていうのかな、子どものころ、わたしの目に世界はこんなふうに見えていたなということを思い出させてくれる絵。さみしくて、あまくて、そっと息をしたくなるような、そんな絵。
団体行動が苦手で親友のできない主人公に、叔母さんが自分の旅での出来事を語り聞かせます。
一瞬でも気持ちが通じ合えたら、その人が親友だとおばさんは言いたげ。
どのエピソードも味があって面白いんだけど、インドでの長距離バスでの、お尻がスポッとはまり込む話は特におすすめ。