ジル・ルイス作。
表紙の絵を見て舞台は自然の豊かなところと思っていたら、全然違った。
イギリスのゴミゴミした都会。
主人公のスカーレットは、お母さんと弟のレッドとの3人でアパートで暮らしている。
会ったことのないお父さんはトリニダード・トバゴに帰ったまま戻ってこない。
スカーレットの肌はキャラメル色だが、レッドの肌はお母さんと同じで白い。
3人で静かに暮らしたいのに、ソーシャルワーカーのギデオンさんが、そっとしておいてくれない。
スカーレットは、心の病で働くことも家事もできないお母さんと自閉症のレッドの世話をしている。
しかし、お母さんのタバコのせいで部屋が火事になり、家族がバラバラになってしまう。
レッドとコミュニケーションを取れるのはスカーレットだけなのに、レッドは施設に保護されスカーレットは里親の家で暮らさなければならなくなる。
新しい学校でようやく友達ができそうになるが、レッドのことを隠していてグループからいじめられてしまう。
そのときのスカーレットのセリフが痛々しい。
「あんたちは、だいじょうぶだよね。りっぱな家もりっぱな家族もあるんでしょ。夜になればだれかが食事を出してくれるんでしょ。お母さんもお父さんも、めんどうをみてくれるんでしょ。親の頭だっておかしくないし、親にののしられたり、悪態をつかれたりもしないんだよね。でもレッドとあたしは、ちがうんだよ。あたしたちは、そんなの何も持ってない。あたしたちには、おたがいしかないんだ。もしあんたたちが、たれこんだりしたら、あたしたちは引き裂かれて、何もなくなっちゃうんだよ」