ファブリツィオ・ガッティ作、関口英子さん訳。
訳者は、チポリーノの冒険も訳した人だ。
主人公はアルバニアの少年ヴィキ。
お母さんと妹の3人で、先に仕事を求めてイタリアに渡ったお父さんを頼って、アドリア海を渡る。
お母さんは妹のブルニルダに、大きなお船に乗るのよと言っていたが、乗せられたのは密航業者のゴムボート。
もちろん定員オーバーだ。
海は荒れ、ブルニルダがぎゅっと抱いていた人形のブレルは波にさらわれてしまう。
立錐の余地もない乗客たちに、船を進ませるために何人か海に飛び込めと、密航業者の1人が脅す。
誰も押し黙って何も言わないが、結局アルバニア語の分からないクルド人の女性が海に突き落とされてしまう。
命懸けで渡ったイタリアだが、お父さんが連れて行ってくれたのは、工場を超えたまだ奥のジメジメしたゴミ置き場のどん詰まりの箱のような小屋だった。
裏は汚い水が流れる運河だ。
ブルニルダは、いつ大きなお家に住めるのと尋ねる。
お父さんはいつかきっと大きなお家に住めるようになるよと答える。
しかし、滞在許可証を持たない人は、見つかると国に帰されてしまう。
だからできるだけ人目につかないように暮らすんだ、とお父さんは家族に告げる。
学校はどうするのと聞くヴィキに、おじさんと2人でヴィキを受け入れてくれる学校を探すという。
見つかった学校に行くのにも、ビクビクしながら通わねばならない。
途中で警官を見つけ、送ってくれたお母さんともどもまた家に引き返したこともある。
お父さんは、イタリア人がやりたがらない建設現場の仕事をしていた。
ある晩お父さんが帰ってこなかった。
なんの連絡もなく、お母さんも泣いている。ヴィキたちは不安な夜を過ごした。
翌日帰ってきたお父さんは、バス停で警官に滞在許可証があるか聞かれ、持っていたお金は、支払明細を見せろと言われ、非正規だからないと答えると、盗んだ金だろと全部取り上げられたという。どこで働いていたかも、雇い主に迷惑をかけるので黙っているしかなかった。
1回目は釈放されるが、2回目は有無を言わさず国へ帰される。
以前よりもっと注意して暮らさねばならなくなった。まるで幽霊のように。
ところが12月のある晩、お父さんに起こされる。目を覚ますと、パトカーの青い光が見える。
4人で小屋を逃げ出す。隠れていたが、サーチライトで捜索され、仕方なく運河に入って向こう岸まで逃げなければならなかった。
お母さんは、何も悪いことはしていないのに、イタリアの神様は自分たちを受け入れてくるないと泣き出す。
住んでいた小屋はぺしゃんこに潰されていました。
お父さんたちは、借金を返すために貯めていたお金を使うことに決め、なんとかアパートを借りようとします。
でも、不動産業者に騙されて、前金として払ったお金は返してもらえませんでした。
読み進むにつれ、いたたまれない気持ちがどんどん膨らんでいきます。
最後に少しだけ光が見えます。
それが救いです。