村上しいこさん作。
とてもよかった。最近読んだ中でベスト1かも。
そのうちきっと何かの賞を取りそうな作品です。
妻を病気で亡くしてから生きることに意欲を感じなくなった主人公。
明日を迎える意味を見いだせなくなり、早く死んで妻のそばに行きたいと、そればかり考えていた。
でも、死ぬまでになにか子どもを育てる思い出を作ると幻の妻と約束をした。
そして、始めたのが「キッズクラブただいま」でのアルバイト。
キッズクラブでの先生や子どもたちとのやりとりは、よくここまで丹念に取材されたなあと舌を巻くほどのリアルさ。
もちろん、作者が練り上げたフィクションですけどね。
やがて、ぐるぐる先生と子どもたちから呼ばれるようになった主人公は、今を生きる子どもたちや親たちの問題に翻弄される。
すべては子どもたちのために、という方針が、運営のためにやむを得ず曲げられたり、親との諍いを避けるため子どもの意見が無視される理不尽さに、子どもも大人も生きづらさを抱えていることに気づいてたりしてゆく。
よくこなれた伝わりやすい文章に引き込まれて行きます。
例えば、
創はうつむいて答えない。
こぶしを握り締めている。
せつないほどに自分を抑え込んだプライドが、そのこぶしの中にある。
今の彼を納得させるものが、僕には見つけられない。けれど、見つけたい。