保坂和志さん作。
この人は自分で書いてはるが、猫が出てくる話ばかり書く人らしい。(まだこの本しか読んだことないので)
表題作と「キャットナップ」の二つの作品が収められている。
前者はネコが中心の物語で、後者は人間中心。
ぼくは、前者がよかった。
同じ階に住む3人の人が出てくるんだけど、両隣の人はそれぞれネコを飼っているのに、主人公だけ飼っていない。
それなのに、屋上でネコたちを遊ばせながらネコの話ばかりする。
そこにやってくるノラ猫のクロシロが、物語の中心になっていく。
この人の文体は長ったらしくて、なめらかで曖昧で、考え深くて好きだ。
ネコのしぐさをうまく言葉で説明していて、思わず膝を打ちたくなる。
表紙の茶トラは、保坂さんが実際に飼っていたチャーちゃん。
物語の舞台と同じ世田谷で出会ったネコ。
ウイルス性の白血病で4歳で死んだそうだ。
最後のページには、大島弓子さんが解説漫画を描いていて、やっぱりクロシロに心惹かれている。