しみじみと読み終えた。
いとうみく作。
この人は、どうしてこんな物語が紡ぎ出せるのか。
最後の場面は国吉さんと終わるのか、廉太郎と終わるのか、どっちかなぁと思いつつ、やっぱり廉太郎でよかったという気がする。
雨音が主人公。突然パパを交通事故で亡くす。
母は、赤ちゃんの時に雨音を置いて家を出て行ったきり。
父1人子1人だったが、パパには来月一緒になるはずの婚約者帆波さんがいた。帆波さんも事故で怪我をして入院中。
親戚のおばさんは雨音を引き取ると言ったが、出来なくなった。
雨音もパパと暮らした家を出るつもりはない。
それで一緒に暮らし始めたのが、国吉さんだ。
国吉さんは、雨音の産みの母。
雨音は知らなかったが、国吉さんは人の気持ちや空気が読めず、おばあちゃんから欠陥人間とさんざんいじめられて出て行ったのだった。
再会もその後の暮らしも、およそ親子らしくない。
そこへ、帆波さんも一緒に暮らしたいとやってくる。帆波さんのお腹には、パパとの赤ちゃんがいた。帆波さんは、他人との垣根を安安と越えていける人。
雨音を心配してラインを送ってくるのが、幼馴染の廉太郎。廉太郎も母との二人暮らし。
母が鬱で、家のことも母の世話もひとりでしていた。
国吉さんの働くレストランで、煮込みハンバーグを食べたシーンはジーンときた。
みんな人の心を傷つけないように生きているけど、それを恐れずに一歩踏み出した人たちが、傷つきながら人を思いやっていく物語。