いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

エマ・ジーン・ラザルス、木から落ちる

ローレン・ターシス作。

最後のオチがなんとも言えず味わい深く、面白かった。

エマ・ジーンは、友だちがいない。

お父さんは数学者だが、2年前に交通事故で亡くなってしまった。

トイレで泣いていたコーリンが「助けて」と言ったので、言葉通りに受け取ってしまうエマ・ジーンは、偽の手紙を書いて問題を解決する。

その後も、良かれと思って相手の気持ちを考えずに、論理的に正しいことをして問題を解決しようとする。

そして、最後にコーリンの家の窓の外の木から落ちてしまう。

エマ・ジーンは、自分のしたことで結局何も解決しなかったことを知る。

 

その晩、お母さんが優しく語りかける。

 

「ものごとは、いつもわたしたちの思いどおりにいくとはかぎらない。

努力しても、ときには傷つき、ときには泣くこともある。あり意味、木から落っこちることだってあるのよ。でも、人は立ちあがって、つぎは、同じ木にはのぼらないようにするか、のぼったとしても、もっとしっかりつかまっていることにする。」

 

お父さんの好きだったポアンカレの言葉も面白い。

「ものごとを証明するのは、論理によってであるが、人生の可能性を発見するのは、心によってである」

 

翻訳の部谷真奈美さんの文章におどろかされます。

例えば次のようなところ。

 

そのうち、エマ・ジーンは自分のずっと奥に、もっとほかの、見おぼえのない、沸騰するような感覚がわきあがってきているのを感じた。キルトの新しい四角形たちの目もくらむようなあでやかさが、血管の中をかけめぐっているようだった。

 

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