とてもとても、いい本でした。
城山三郎、『そうか、もう君はいないのか』(新潮社)
ガンでなくした奥さんのことを書いた物語。
死んでいく話なのに、ほのぼのとあったかい気持ちにさせられました。
それは奥さんの容子さんがうらやましいほどかわいらしい性格の人で、その容子さんを語る著者の眼差しが限りなく優しいからです。
いつも嫁さんに不満ばっかりいってるぼくは、著者のようになりたいなあと思いました。
閉まってる図書館の前でのたまたまの出会い。
名古屋での新婚時代。
引っ越した土地が「城山」で三月に引っ越してきたから、ペンネームは城山三郎。
新人賞受賞の電報が届いたとき、まだペンネームを知らなかった容子さんが、うちにはそんな人いませんといったこと。
茅ヶ崎での穏やかなくらし。
ガンと分かって帰宅したとき、悲しませまいと歌を歌いながら帰ってきたこと。
一つ一つのエピソードが愛情こめて綴られていました。
そして7年後、城山さんは容子さんのところへ旅立ちました。
そうか城山さんももういないのかと不思議な気持ちになります。