村山由佳さん作。
ヤンチャとハム太とノリオと「ぼく」(ワタル)。
彼らが生まれたのは、かつて首相を務めた人が収賄罪で逮捕されたり、ソ連のミグ戦闘機が函館の空港に強行着陸したり、天安門事件が起こったり、南アフリカのアパルトヘイトに反対する暴動が起きたり、ベトナムがついに統一されたりした年。
小1の時東京にディズニーランドができ、翌年江崎グリコ社長が誘拐された。
昭和61年。
これは、そんな彼らの秋から冬にかけての物語。
柿泥棒をするのも先生に叱られるのも、いつも四人一緒だった。
なのに、ヤンチャが病気で入院してしまう。
3人が見舞いに行けたのは、半月後だった。病気の原因がよく分からなかったから。
3人はヤンチャのために、タイムマシンを作ることにする。
できるわけがないと分かっていながら、ヤンチャのために何かしたかったから。
ようやく完成した写真を意気揚々と見せに行った時、ヤンチャのベッドは空になっていた。
3人は、約束する。
ノリオはタイムマシンを作り、自動車工場を営むハム太の家で組み立て、ぼくはこの出来事を3人が忘れないように文章に記録しておく、と。
月日は流れ、大人になり、ぼくはなかなか文章がまとめられなかった。
ノリオー大山紀夫は、東京の大学にすすんで今は、研究室で量子力学の研究をしている。
ハム太ー橋本公太は、自動車修理工場を継いだ。
そしてぼくは、ようや4人の記録をまとめることができた。
それがこの本だ。
ヤンチャに一番読んで欲しかったのかもしれない。