海に出た。橋を渡って北へ行くべきか、南へ行くべきか。
泊まった民宿は南のような気がする。
民宿から小さな舟で白崎海岸に連れて行ってもらったのを覚えている。まだかまだかと思ったから、北だと近すぎる。
母が船酔いした。父は絶対に酔わなかった。海軍で船に乗ってたから。
白い岩を見て、また舟で帰ってきた。ただ暑かった。
そんな記憶を辿りながら、それでも南に行くのは断念する。白崎海岸がどんどん遠くなってしまうから。
北には予想通り、記憶にある民宿も浜もなかったが、フナムシがぞわぞわと逃げまどっていた古びた堤防が記憶とぴったり重なった。