中学校の図書室で借りた中の一冊です。
この本は、なかなか読む機会に恵まれなかった。
まずは、どこの図書館でも貸出中になってた。
次に、自分自身の問題。
鋼という文字に何故か拒否反応があって、読む気にならなかった。
そのうち、本屋大賞に選ばれてますます読む気をなくした。
で、今回親しくしてもらってる図書館支援員さんのおかげで、ようやく読むことができた。
みなさんよくご存知のように、調律師さんの物語。
でも、ピアノが弾けるわけじゃない。
北の国の山村で生まれ育った主人公。
このあたりは、宮下さんがトムラウシで暮らした経験が生かされているのだろう。
寒さのことも、北海道暮らしの人の感覚。
この人らしい、目立たないおとなしい特に何も自慢できるところのない主人公。
双子のピアノも、普通の和音に惹かれる。
次のくだりは、ぼくらの仕事と同じだなあと思った。
ハンマーの状態を整えるために、目の細かいやすりで削ったり、針を刺して弾力を出したりするのが、整音の決め手になる。
この作業が、肝だ。決め手になるぶん、難しい。やすりで削るのも、針を刺すのも、わずかな加減なのだ。削るべき、刺すべきポイントがあり、その加減は手で覚えるしかない。つくりたい音のイメージに合わせて、ひとつひとつ状態の違うピアノの、さらにひとつひとつ異なるハンマーに、やすりをかけ、針を刺していく。手間も時間もかかる作業だ。
こんな後輩に、技術を盗んでほしいなあという思いが湧いた。