三萩せんやさん作。
二十数年前の病院から物語は始まる。
病院の中の図書館。
そこで穏やかな時を過ごす患者さんたち。
やがて院長が亡くなり、病院は閉院した。
だが、院長の遺志で図書館だけは残った。
そこから、物語は現代に移る。
まるで映画のような展開。
就活にがんばってきた主人公だが、就職先が決まらない。
親戚に声をかけてもらい、図書館の面接を受けると、採用された。
本なんて読んだことがないのに、人を元気にさせるのが特技だと言うと合格した。
そこは、図書館ホスピタルと呼ばれていて、元気のない人が元気づけられる図書館だった。
図書館のスタッフになり、月の読書数0冊だった主人公が、本の面白さに気づいていきながら、利用者を元気にしたり、同僚と人間関係を築いていくところが面白かった。
すんなりと読める文章が、心地よかった。
例えば、次のような文章。
アゲハチョウが飛んできた。
黄色に黒いライン、赤と青の差し色が入った姿を見て、もうそんな季節なのかあ・・・などとおもっていると、そのアゲハチョウが凪原さんの肩に止まった。
本のページを先に先にと進めることは、発見があって楽しいもの。人間関係も同じなんじゃないかな、と思った。
昔ながらのカード目録が役にたつ場面は、検索機のない時代の図書館を知る人には懐かしさを感じさせてもらえます。
図書館が好きな方におすすめの一冊です。