いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

碧と花電車の街

麻宮ゆり子さん作。

主人公は碧。

舞台が名古屋の大須なのがうれしかった。

昭和30年代に、碧は大須で中学高校時代を過ごす。

お母さんは福井の農家の生まれで、一度大阪へ女中に出されたが、戦争で一旦福井に帰り、そこに居場所がなく、富江さんと一緒に大須に来て再出発した。

富江さんの長屋の一室を借りて暮らしている。

昼はポンパルという喫茶店で女給をし、夜はお酒を出す店で働いて翠を育てていた。

碧は映画館が好きで入り浸っている。夢は映画に関係する仕事に就くこと。それと市電の花電車に乗ること。

地域の夕刊紙「名クロ」の記者神田さんやいつも黒マントの山高さん、ストリップ劇場大奥の紅玉さんたちに可愛がられ、学校でテテナシゴと言われても負けずに跳ね返している。

伊勢湾台風が近づいて酷い目にあったり、東京オリンピックで盛り上がったりする中、映画館がだんだん廃れ、市電が車の邪魔者扱いされても、時代の流れに逆らって逞しく暮らしていく。

読んでいる間、自分もこの時代の大須の空気に浸れ、仲間になれたようで心地よかった。

お金持ちのクラスメイトの原さんのばあやを富江さんの長屋で世話した時、ばあやの鶴さんが日向水を使って洗濯物の襟まで綺麗にしたのに驚いた。

鶴さんが、今までばあやとか女中さんとかしか呼ばれなかったのに、富江さんの長屋ではみんな名前で呼んでくれると喜んでいた場面も心に残りました。

 

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