天川栄人さん作。
中学校のうらじゃプロジェクトに集められた5人。
うらじゃの経験者のあさひを除いて、みんな問題児ばかり。
それぞれの事情で内申点が足りないために、うらじゃプロジェクトで救済すべくコワモテの河野先生から、無理やり参加させられた。
うらじゃとは、よさこい系の踊り。岡山の夏の風物詩。市民参加型のお祭りだ。
メンバーは、スケートの練習で出席日数が足りなくなったタケル。
教科書ちゃんと影で呼ばれている真面目で勉強のできる玉留さん。実は2年の時カンニングしたという噂があり、今は保健室登校。
楽々(らら)は、シンプルに不良。ファンシーな名前だが男子。普段はヘラヘラしているが、キレたら何をしでかすか分からない。
桃香は、噂の転校生。女優の娘らしい。東京育ちなのに岡山なんかに来て、岡山なんて大嫌いと思っている。
この5人が、それぞれの視点で書かれた章で、物語が進んでいきます。
うらじゃは最低でも10人いないと参加できないので、地域の踊り連に入れてもらう。
その連の名前が、鬼小夜時。
あとで、おにおやじと読むと分かる。
うらじゃは、鬼が主役のお祭り。吉備地方の鬼の名は、温羅(うら)。
温羅は大陸からやってきて、製鉄の技術を伝えたといわれる。しかし、力を持ちすぎたために大和朝廷に打たれてしまう。
吉備の人たちを豊かにしたのに、鬼として扱われた温羅伝説が、やるせない5人の気持ちとも重なる。
何度も涙が溢れそうになりました。
例えば次のような場面、
「・・・あたしさ、転校六回目なんだよね」と靴箱の前でうずくまって独白する桃香。
どうせ、どこに行ったって歓迎されないんだもの。
どこに行ったって悪者にされるんだもの。
まるで、そう、鬼みたいに。
楽々の章のラスト。
温羅にも家族がいたんだよなあ、とか、そのとき思っちゃったりしたわけ。
オレの人生なんかどうせろくでもねえんだろうけど、でももしかして、ゼツボーすんのはまだ早えのかもな、とか、思ったりするわけ。