蓼内明子さん作。
久しぶりに、本を読んで涙が溢れました。
その場面は、ヤマアラシが保健室にやってきて、「じゃあ、オレが許す!」と言うところ。
主人公は6年生のウタ。
クラスにやってきた転校生の桐林がいつもイラついているので、ヤマアラシのようだと思っていた。
2年前にお母さんが病気で亡くなってから、お父さんのさくちゃんがご飯を作るようになった。
お父さんは、おもちゃ会社専属の動物フィギアの原型師だ。原型師というのは、フィギアの元になる形を作る人なのだそうだ。
そのさくちゃんが、ヤマアラシのことを聞きたがる。
さくちゃんは動物のフィギアを作るとき、その動物がその時何を思っているのかを考えながら作るのだという。
ウタは、ヤマアラシがどんな気持ちでいるのかと思うようになる。
ヤマアラシは、サッカーが得意のようだった。
でも、クラスの男子とトラブルになり、みんなから嫌われてしまう。
ウタの苗字が長谷部だと知って、ヤマアラシはウタにだけは普通にしゃべってくれる。
ウタはサッカーのことはあまり知らなかったが、リフティングが何回できるのか、ヤマアラシに聞いてみた。
分からないなあと返事してから、数えてくれるのならやってみるよということになり、休みの日にヤマアラシが練習している公園に行く。
2人で会っていたことがクラスの噂になり、ウタは仲のよかったルカちゃんとホノカちゃんに無視されるようになってしまう。
サッカーに真剣に取り組むヤマアラシの姿に、乘代雄介さんの『旅する練習』を思い出しました。
『右手にミミズク』といいこのお話といい、蓼内さんの本はいいなあ。