ふー、読み終わりました。
いい物語だった。
いとうみくさん作。
バイト先のコンビニで、同僚だった大学生を殴ったという罪で、勾留された主人公円人。
当初、円人が一方的に悪いとされていたが、実は店の金がなくなったのを大学生が円人のせいにしたからだった。
試験観察中、深見煙火店という花火屋さんに補導委託された。
花火師の深見さんには、交通事故で幼い息子を亡くした過去があった。轢いたバイクを運転していたのは無免許の高校生。事故を苦にして自殺してしまった。
自分が目を離したことを責め続ける妻と、自殺してしまった加害者の高校生の家族にも思いを馳せる深見との溝は深まり家族は崩壊。
そんな深見の会社で、円人の気持ちは少しずつほぐれていく。
次のシーンが、いいなと思った。
今まで祝ってもらったことなどない誕生日に深見が打ち上げた花火を見て、円人の目から知らずに涙が流れた場面。
「ただ、雨が」
「雨⁉︎」
深見が素っ頓狂な声をあげて、空を見上げた。寒天に星が瞬いている。
「雨、雨か。なるほどな」
そう言って、深みはコーヒーカップに口を付けて、もう一度空を見た。