敷村良子さんの本。
敷村さんはこの本を、自分の伯父さんの手記を元にして物語化したんだそうだ。
主人公は、戦後すぐに伊予鉄で働くようになり、坊っちゃん列車の機関清掃士から機関助士になる。
今の時代なら許されないようなことが許されるおおらかな時代だった。駅長と喧嘩したり、上司の言うことを聞かなかったり、機関庫で酒盛りをしたり。とにかく、豪快だ。
それでも、客車を引っ張る機関士の仕事への誇りを感じる。
燃えにくい質の悪い石炭を使っていたり、軍手もろくに支給されなかったりで、できたばかりの組合の力も借りず、機関士仲間で相談して仮病を使い、会社を困らせて願いを叶えていく。
しかし、時代の流れには逆らえず、伊予鉄も電化され、機関士になれぬまま坊っちゃん列車は役目を終えてしまった。
消えゆく蒸気機関車のかまたきとして、日常をがむしゃらに生きた青年の物語です。