安田夏菜さん作。
この人は、ぼくと同じ大学出身。
いつもながら、テーマがはっきりしている。
今回は、自分らしさとは、かな。
主人公は、ロシア人の母を持つ藤堂ミハイル。
赤い髪で見るからに外人だが、日本生まれの日本育ち。
いじめられないように、面倒なことには関わらず、できるだけ目立たずに生きている。
そこへ、山口アビゲイル葉菜が転校してきた。
彼女のルーツはアメリカと日本。肌の色はコーヒー色でカーリーヘア。
葉菜も日本生まれで、お父さんのことは知らない。
はっきり自己主張するので、転校初日から女子全員に嫌われることになる。
それにもめげずに、好きな虫を学校に持ってきて、たった1人で科学部生物班をつくる。
生き物に対する愛情と知識は半端じゃない。
ミハイルはそんな葉菜を見ていて、ヒヤヒヤしながら気になって仕方がない。
幼馴染の梨々花は好き嫌いがはっきりしていて、葉菜が大嫌い。
そんな梨々花とミハイルは、ともに科学部電脳班。
ミハイルが葉菜と梨々花の間で右往左往するうち、同じ科学部として研究を共にすることになる。
葉菜を一番嫌っていた梨々花が、葉菜の味方になっていくのがうれしい。
世界には200ほどの国しかないのに戦争をしている。クラスにも、たった30人しかいないのにいがみ合っている。
だけど、人間の細胞は37億個もあって、みんな自分のために力を合わせている、という葉菜の言葉にはハッとさせられます。
だから、生き物は素晴らしいんだと。
母の介護をしながら、気持ちを紛らわせてもらえる一冊でした。
治療ができず施設に戻ってきて、今日で2週間母はがんばり続けてくれました。
でもだんだん意識が薄れて、今日はただ返事するだけ。
もうお別れの覚悟をしないといけない段階にきました。
1日でも先に引き伸ばしたいけど、苦しまずに穏やかに過ごせることを何よりも願います。