いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

雨夜の星たち

寺地はるなさんの15冊目。

この作品には、前に読んだほたるいしマジカルランドが出てくる。

治らない病気で入院中の権藤さんが、ほたるいしマジカルランドでメリーゴーランドに乗りたい、と言い出すのだ。

表紙の絵は、その時に主人公の三葉が作った傘。馬や星の絵が透明の傘に描かれている。

 

三葉は、マナー、暗黙の了解、常識、それらのものが、わたしにはわからない、という特性の持ち主。人の気持ちを察することができない。言葉は、その通りに理解し、言外の意味がわからない。

だから、病院のお見舞い代行の仕事を、霧島にピッタリだと言われてしている。

 

セツ子さん以外はみんな変わった登場人物だなと思っていたら、セツ子さんも実は息子を置いて婚家を逃げ出した過去があると分かる。

しかも、その息子が三葉の雇い主の霧島だった。

 

星崎くんのお母さんとの会話も、そういう三葉のセリフだと、確かにそういう見方もあるのかと新鮮だ。例えば、次のようなところ。

 

だめな母親やもん、と自嘲気味に呟く。

「みんなだめですよ。あなたもわたしも、生きている人はだいたいだめです」

「・・・ひどい言いかた」

だめな人間が生み出したこんなにもひどい世界でも、お寿司はおいしいし、わたしたちはそれを食べて、今日も明日も生きていかなければならない。

 

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