寺地はるなさんの14冊目。
この本は郷土のコーナーにあったから、この人の住んでいる大阪が舞台なんだろうな。
ほたるいし市というのは実際にはないから、蛍池と石橋を合体させて創作したのではないかとふんでいる。
遊園地で働く人たちを主人公にして、6人の視点で7つの章からできている。
インフォメーションの萩原紗英、メリーゴーラウンドに憧れているが廃止になる予定のドールハウス担当の村瀬草、清掃員の篠塚八重子、ローズガーデンなどの植物を管理する山田勝頼、社長国村市子の息子の国村佐門、そしてメリーゴーラウンド担当の三澤星哉。
それぞれに、さまざまな過去や家族の事情を抱えながら、このほたるいしマジカルランドという遊園地で働いている。
一生懸命の人もいれば、やる気のないひともいる。
その人たちに対して、社長の国村市子の視線は優しい。
第7章のタイトルが、すべての働く人というのもいい。
退職の日の、山田さんの「引退ライブ」には、思わず声を出して笑ってしまった。
ラストの国村市子の独白は、ほんとにそうだなと拍手をおくりたくなった。
遊園地ってなんのためにあるんやと思う? 今朝、佐門にそう訊ねた。でも答えは、どうでもよかった。「なんのために」なんて、くだらない。
ともに生きていくものに、重要な意味なんかなくていい。価値なんかなくていい。
食べて寝て働いて、ただそれだけ繰り返して死んでいくなんてあんまりだから。
なんのためにもならないものが、ごくあたりまえに存在する。存在することを許されている。それこそが豊かさだ。市子はそんなふうに思う。