寺地はるなさんの11冊目。
この人の作品には珍しく、主人公のハセは詐欺師です。
相棒は弟のように慕ってくる沖。
沖は何をさせてもどんくさく、主人公は沖のせいで元締めの灰島さんに200万円を返済しないといけない立場にある。
それで、沖が親しくなった女に偽の宝石を売りつけるという詐欺をしていた。
ところが40万円巻き上げた相手が取り返しに来て、貯まりかけていた200万円を全部持っていかれてしまう。
仕方なしに考えたのが、老人をターゲットにした詐欺。
老人の世話をして取り入り、老人ホームを紹介すると嘘をついて大金を巻き上げようというのだ。
ハセが沖にその話をすると、いいターゲットがいるという。
それは、沖の母親だった。母親は厳しく、理想の息子には程遠い沖を叱ってばかりで、自分の存在を認めてくれなかったと恨んでいた。
何年かぶりで家に帰った沖は母親が認知症になっていたことに気づく。
ハセはちょうどよいと考えるが、沖の態度が変わってくる。
ハセが、この世のすべての愛は正しくない、正しい愛なんて存在しないと気づく場面には、ハッとする。
そこから物語は意外な方向に進んでゆく。
作者の展開の巧みさには舌を巻きます。