いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

大人は泣かないと思っていた

寺地はるなさんの9冊目、読み終えました。

この物語でも、耳中市の肘差村が舞台になっている。

翼の家の庭の柚子が、何者かに盗まれる場面から語られ始める。

翼は柚子がなくなっていることに頓着しないが、2人暮らしの父が隣の一人暮らしの婆さんが犯人に違いないと決めつける。

それが翼が主人公の一章。

次が、その柚子泥棒張本人の小柳さんが主人公になる二章。ちなみに、隣人のお婆さんの孫娘だ。

そのあと、翼の同級生で二十数年友達付き合いしている鉄腕が主人公の三章。

四章は、父と離婚して出ていった翼の母が主人公。

五章は、農協に勤める翼の同僚で、翼のことを妥当な結婚相手だと考えている平野さんの章。

六章は、人付き合いをせず、村の中で嫌われ者の翼の父の章。

そしてラストの七章は、ぐるっと回ってまた翼の章になる。

 

作者はどの物語でも、登場人物の中に、自分の気持ちを伝えるのが下手な人を登場させる。

例えば、鉄腕はこんなふうに描かれる。

 

そもそも俺は頭が良くない。勉強は苦手だったし、自分の考えていることを自分以外の人間に言葉で説明するのが苦手だ。

 

もっと言えば、登場人物みんながうまく気持ちを伝え合えない人ばかり。

 

相手の気持ちは分からないけど、どうやって自分の気持ちを伝えて、分かり合おうとしているのか、がいつもテーマのように思います。

 

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