辛い辛い内容の一冊でした。
新十津川物語、第8巻。
泥沼に嵌まり込むようにどんどん追い詰められる日本。
庄作の息子、誠太郎と浩次郎の軍隊生活も国のために命を捧げるのが当然のこととして、死へ向かっての記録が綴られていく。
戦況の悪化とともに、海軍に入隊した誠太郎は硫黄島へ。
大空に憧れて予科練に入ったはずの浩次郎は特攻に志願し、人間魚雷回天の訓練に明け暮れる。
どこかで流れが変わって生き延びる道はないものかと思われたが、運命は非常だった。
庄作の家族は、樺太に渡り暮らしの基盤を作っていくが、ソ連軍の侵攻で南へ南への悲惨な逃避行が始まる。
満州や朝鮮半島で起こっていたことが、南樺太でも起こっていたのだ。
ロシア兵の有無を言わさね非情さは、この時は日本人に向けられていたのだ。
敷香(しすか)、塔路、古屯(ことん)、幌内川などの南樺太の地名は、今はロシア名に変わったけど、この時代には日本の町として人々の暮らしがあったのだ。
最後の数ページだけ、トンネルの出口が見えたような気がした。