一木けいさんの2冊目。
この物語が伝えたかったことをどれだけ読み取れたか、まだまだ未熟な自分に気づく。
DVの心の傷は、時間が解決してくれるわけじゃない。家族といることが心の安らぎにならないことも悲しい。
国によって、数字に対するイメージが違うのが新鮮だ。9は、タイでは縁起の良い数字。
タイの人々がどれだけ王様に親しみを感じているのかわかる。
おおらかなタイの人々の関係を羨ましく思った。
それにしても、この作者の文章のうまさには舌を巻く。
もうどこのページだったか紛れてしまったが、タイの路地裏のお店で、扇風機が首を振って回ってる場面をスケッチしたような文章は、まるで絵を見ているようだった。
そのほかにも以下のような文。
『尖りかけた空気を包んで温めるような声で父が聴いた。
彼は私の顔を見てはいなかった。けれど、心はしっかり私に向いていることがわかった。
大丈夫と答えたけど、私の感情は分厚いすりガラスが一枚はさまったようで、自分でも大丈夫かどうかわからなかった。』
漣が、近い将来また朋温と会えることを願う。