いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

列車はこの闇をぬけて

ディクル・ラインハルト作。

壮大な物語でした。

中南米グアテマラエルサルバドルから国境を越え、メキシコを縦断してアメリカ合衆国を目指す少年たちの物語。

コーヒーでお馴染みの国々だが、人々は貧しく子どもたちは幸せとはとても言えない。

親たちはなんとか生活をよくしようと不法にアメリカ合衆国へ向かい、そのまま帰って来ない。

待ちくたびれた子どもたちも、親に会いたさに国境を越える。

しかし、その旅は過酷を極める。

国境の川を渡るのも、誰かの力を借りないとできない。

なけなしの金は、騙されて大人たちに巻き上げられていく。

 

貨物列車の屋根に乗り、犯罪グループのマラスに怯え、山賊の襲撃から逃れ、飢えを凌ぎ、警官たちから隠れて、様々な危険をくぐり抜けたりくぐり抜けられなかったりしながら、北へ向かう。

メキシコへ入ってすぐの難民収容所でたまたま出会ったフェルナンド、ヤス、アンジェロ、エミリオと仲間になり、5人で旅を続ける主人公のミゲル。

何度かこの旅を経験しているフェルナンドのおかげで、ほかの人たちがどんどん脱落していく中で、なんとか切り抜けていく。

ずっと一緒に旅して来たのに、エミリオは走る列車の屋根から山賊たちに放り投げられてしまう。

インデオのエミリオを快く思っていなかったフェルナンドもだんだん気持ちが変わっていく。

大人は誰も信じられなくなった5人に、温かい食べ物を用意し、助けの手を差し伸べた教会の神父さんには束の間ホッとさせられた。

麻薬組織のセタスに捕まり人質となったときには、いくらなんでももう運が尽きたと思った。

でも、小さなアンジェロのおかげで脱出できる。

アンジェロは、旅をあきらめて故郷に帰ることを選ぶ。

本当にママに会いたいのか分からなくなるミゲルだか、ヤスとともにこの旅を最後まで終わらせようと強く思う。

最初は自分のことだけ考えろと言っていたフェルナンドが、アメリカ国境では、ミゲルのために犠牲になってくれる。

5人の仲間のことがいつまでも心から離れなくなる物語です。

 

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