いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

空へのぼる

八束澄子作。

桐子と乙葉の姉妹の独白で、物語が進んでいく。

桐子が中学生の時に乙葉が生まれた。

7ヶ月の時、父母は2人を置いていなくなった。

施設に預けらそうになった時、唯一の身内のおばあちゃんの妹が育ててくれることになった。

その「おばあちゃん」も近頃はボケてきた。

女ばかりの3人家族に、ねこのじゃらしもメスだ。

桐子は高校を卒業して、加藤造園に就職した。女庭師だ。

そこで空師の軍二と出会う。

空師とは、大木専門の職人だ。

 

一筋縄ではいかないけれど、だんだんと新しい家族を作っていく4人の関係が暖かい。

 

木に込めた作者の想いが文章にも表れて、読み応えがあった。

例えば、次のような箇所。

 

○木は、傷がついたり、虫が入ったり、穴があいたりすると、皮や身を厚くしてこぶをつくる。桐子の心にも固いこぶがある。それが、この人といると溶けていく。

 

○こけむした幹にだきついた。木は地面につきささったアースだ。桐子の中のビリビリしたものを、全部地面へと吸いとってくれる。

 

○「あんな、恵まれたところでのほほんと育った木よりな、苦労して苦労して育った木のほうか、高ううれるんやで」

 

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