路上で生きぬいた少年、という副題。
あまりに過酷すぎて、ページをめくるのが辛かった。
こんなことがあっていいのか、と思考がぐるぐる回る。
作者のリ・ソンジュさんが北朝鮮で過ごした少年時代をまとめた。
お父さんは朝鮮人民軍の重要な地位にあったが、1994年に金日成が死去後、事態は一変する。
父は失脚し、一家は北朝鮮北部の小さな町に追いやられる。
食べ物をさがしに出かけた父は戻ってこない。
数ヶ月後、母も親戚の叔母の家に食べ物をもらいにいったまま帰ってこなかった。
住んでいた家も騙し取られて、路上生活になる。
生きるために市場で盗みをするうち、同じような境遇の子らと、コッチェビ(浮浪児)団をつくる。
そこからの何章かは、また読むのが辛かった。ヨンボムのおばあちゃんの死、縄張り争いのケンカ、収容所、そして2人の仲間も失ってしまう。
4年間、そんな生活を続け、もう何もかも諦めかけていたときに、自分を探し続けていたおじいちゃんと再会。
その後、ブローカーの手引きで父親に会うために脱北する。
何も知らされずに飛行機に乗り、テーハンミングクが中国の町の名前だと思っていた。
ぼくもそう思った。
税関で偽のパスポートを見破られ、取調室に連行された時にはどうなることかと思ったが、テーハンミングク(大韓民国)は、脱北者として丁寧に扱い、父と再会できた。
北朝鮮は、閉ざされた理解不能の国として、どちらかというと避けてきたが、そこに暮らす人たちは家族を思い夢を持って生きる普通の人たちだ。
他の国の人と同じように喜ぶし、同じように悲しむ。
どっちが優れているとか正しいとかいう前に、対等の同じ人間として付き合えたらいいのにと思う。