ヴァレリー・ゼナッティ作。
エルサレムに住むタルがパレスチナの子と知り合いになりたくて、手紙を入れた瓶を兄に託す。
拾ったのは、ガザ地区に住むナイーム。
それも、そこに暮らす一人の人として。
タムが書くように、イスラエルでは人々は何ごともなく年をとって、寿命で死ぬなんて、ほとんど奇跡に近い。
いつテロに巻き込まれるかという不安とともに暮らしている。
ヒレルカフェの自爆テロでは、明日結婚式をするはずだった娘さんが亡くなった。
ナイームが知り合ったボランティアの青年の言葉にはハッとさせられる。
「何より大切なのは、そういった人たちが、自分たちが世界にひとりだけの存在だって気づくこと。偶然、つらい運命のもとに生まれ、その運命をともにする人たちといっしょに暮らしているからといって、十把ひとからげにはならない。難民という枠にくくられたりしない。ひとりひとりがちがっていて、かけがえのない存在なんだ。」
イスラエルの中にも、パレスチナ人と仲良く共存しようと考えて運動しているタムの両親のような人たちがいることを知ったのも、大きな収穫だった。