いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

イルカの家

読み終えました。

ブログPocket Gardenで教えてもらった本。

ローズマリー・サトクリフ作。

舞台は16世紀のイギリス、ロンドン。

主人公は、9歳の少女タムシン。両親はなく故郷を離れてはるばるロンドンのおじさんの家で暮らすことになる。

家族は、ギディアンおじさんとデボラおばさん、お父さんの鎧作りの仕事を引き継ごうと弟子入りしているピアズが14歳、その下に「ほとんどふたご」のベアトリクスとジャイルズ、それから3歳のちびちゃん。

自分の居場所がないと感じるタムシンなんだけど、家族はみんないつも暖かい。特別扱いしていない。それでもやっぱり、寂しいんですよね。

兄弟にはほんとは、一番上にキットがいたんだけど、海へ出て行き戻ってこなかった。

タムシンが心許せるのは、おとなしいピアズ。特に大きな事件が起こることもなく、季節とともに家族は過ごしていく。

イギリスの地名がぼくには心地よく響く。

草原や森、川、偶然見つけたお婆さんの家や庭、町の建物や灯りなどの情景が丁寧に描かれていて、目に浮かぶようだった。

訳が巧みだなと思った。

ぼくが一番好きなのは、タムシンが「王妃さま、ばんざい」と叫ぶ場面。

船に乗って王様の一行がグリニッジからウエストミンスターへ戻ってくるのに出くわした時、だれもかれも「王さま、ばんざい」と言うけれど、王妃さまのことは誰も言わなかったから。

結末はクリスマスの夜。

思いもよらなかった奇跡が起こる。

うれしそうな赤いチューリップの花が余韻に残る。

 

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