村中李衣さんの本。
20年ほど前に、雑誌『ちいさいなかま』に連載されていたエッセイをまとめたもの。
『ちいさいなかま』はいいなと思いつつ、少し距離を置いて眺めていた。
今なら、とてもいいなと思える。
地に足つけて子育てしてきはったなと思う。
うちとはえらい違い。
10歳だった娘さんが、アンネの隠れ家を見にオランダに行った件で強く思った。
きらめく言葉がたくさんあった。
もしもあのとき、みっちゃんが「いいですよ。五十円負けときましょう」といったなら、私たちの胸には「おまけしてもらった」という記憶しか残らなかっただろう。
本当の心遣いとは「私があなたのために」とか「私がやってさしあげましょう」というような「私が」、「私が」を消して、ただひたすら、この瀬戸内のかぜのように、心地よさを送りつづけることなのかもしれない。