いちばんべったこ

tabi noti dokusyo tokidoki guti

迷い子

メインのトンネルも無事に通過し、あとは永原駅に下るだけでした。
ところが、トンネルを出たすぐに林道があり、地図を見るとこっちの方が近そう。
そうなると、たとえ木が倒れていようと通ってみたくなるもの。
そのうち自転車乗って下れるだろうと甘い考えで、自転車担いで木を乗り越えたりくぐったりして進みました。
辺りの様子はさらにひどくなってきて、台風のとき風が舞ったのでしょう、倒れている木もさらに凄まじくなってきました。
気がつくと、道路を通る車の音も聞こえなくなっています。
そして、どこが道か分からなくなっていました。
頼りになるのは、スマホの地図だけ。
自分の位置を確かめると、道から大きく外れて山を登っています。
バックするにも道がありません。
山の中で迷い子です。
とりあえず、下の方に向かって進みました。
するとさっきとは違う道が現れ、なんとか下っていけました。
人家が見えてホッとしたのもつかの間、害獣除けのフェンスがぐるっと取り巻いています。
電気が流れているフェンスでした。
その中にぼくはいたのでした。
道の先のフェンスは門になっていて、開けようとしましたが、クサリが知恵の輪のように巻かれていて何度試みても開けられません。
しかたなく、もう一方の門まで行きましたが同じでした。
フェンスはずっと山の上まで続いていて、きた道を戻らなければあの道路に出られないようでした。
暗くなったらどうしようと思いました。
とても引き返す気にはなりませんでした。
道はあるのに外に出られないなんて。
もう一度クサリをいじっているとなんと抜けました。
鉄の門を自転車が通れるだけ開けたら、バチバチと電気の音がしました。
こわごわ通って、元どおりに閉めることができました。


自由に走れるのが、こんなにありがたいなんて、初めて感じました。


ようやく永原駅に到着。
どうなることかと思いましたが、新快速の窓から見る山がいつもとは違って見えました。